2023.11.5 「既製衣料と人体寸法」
講 師
元実践女子大学生活科学部教授 高部啓子氏(昭40卒)
高部氏は大妻女子大学短期大学部および実践女子大学にて被服学の研究者として第一線で活躍され、後進の育成にも尽力されました。また本会の元会長でもありました。
氏は卒業と同時に柳澤澄子先生のもとで第1回体格調査の助手として勤務され、以来、衣服に関わる人体寸法や人体形態の把握に関心を寄せてこられました。講演は人体計測に関する研究の詳細な歴史を紐解くものでした。
1965年に国の仕事として第1回日本人の体格調査が企画されました。氏はこのプロジェクトの実施計画及び調査に関わり、初年度は中都市と大都市を対象に15地区17班で調査が実施されました。調査対象は初年度は小中学生で、計測マニュアル作成には163項目の研究者項目と121項目の衣料業界要望項目から選ばれた75項目が使用されました。計測機器にマルチン式人体計測器などが用意され、1966年と1967年に約32,000人の調査が行われました。その後、工業技術院は1971~’72年に25~65歳成人の調査を実施し、合計約4万人のデータが蓄積されました。
続いてJISとの関連が述べられ、第1回体格調査を受けて1970年に制定されたJIS L 0102が普及せず、1980年に新たなJISが制定され、第2回体格調査データを反映して1983年に改定。その後、ISOに準拠した改定が続き、2023年にはJIS L 4004とJIS L 4005が被服構成学部会のデータを参考にして改定されました。
次にISOについて説明され、ISOは国際標準化機構で、衣料サイズに関する技術委員会TC133が2010年に中国の呼びかけで再開され、ISO8559-1-2017の制定には日本を中心とする原案が全面的に取り入れられました。これにより柳澤先生が始められ、日本の被服学関係者が育んできた日本の人体計測法が世界標準になったといっても過言ではないといいます。ISO8559-2では年齢性別集団ごとに基本身体寸法が定められました。
最後に、現在の既製衣料のサイズ不適合問題に触れつつ、人体計測の難しさと機械化の課題を指摘。既製衣料メーカーは伸縮素材やデザインで工夫していますが、今後必要な体型情報について改めて考えるべきであると言及して結ばれました。
参加者は69名(会員27名、非会員42名)で、講演後、希望者による会員交流会も行われ、和やかに進行しました。
2022.12.17 「コロナ禍を経た家事の変化から、未来の家事を考える」
演 題
コロナ禍を経た家事の変化から、未来の家事を考える
講 師
花王(株)生活者情報開発部情報分析室マネージャー秋田千恵氏(平1卒)
講演会はオンラインで開催され、31名が参加し、講演後、グループディスカッション、発表、講評、交流会とスムーズに進行しました。
講演では秋田氏が所属する生活者情報開発部での生活者研究をふまえて、花王が実施したアンケートを基に、家事に関する意識の時代変化と世代間比較が提示されました。家事を分担していると回答した既婚男女が増加傾向にあるなど、時代の変化が見て取れます。
コロナ禍を経験した今の生活意識に関しては、家の中で快適に過ごすことへの意識が高まり、テレワークに対して満足している人が多いとのことです。また未来の家事では、AIによって便利な生活になることを多くの世代で望んでいることが分かりました。
次に5つのグループに分かれてのディスカッションとなりました。グループごとに①「AIおまかせ生活で必要とされる家事スキルとは?」②「自分だけの家事とは?」のテーマを選んで話し合い、その後グループ発表が行われました。注目されたのはAIという視点です。「家事」について改めて考える良い機会となりました。
2021.11.21 「着心地の追究―まずは研究手法の開発から―」
講 師
田村 照子氏(昭和39卒/昭和41院修/すおうの会会員)
講演会はzoomで開催され、全国から72名の参加申し込み、当日参加65名で、約6割が会員外でした。講演後、懇親会がもたれ、親睦を深めました。
氏は、まず研究を志すことになったいきさつについて述べられました。氏は恩師柳澤澄子先生に導かれ、家政学とは異なる医学や生理学分野での経験を積まれました。次いで当時テレビ放送大学の試験放送開始に際し、恩師矢部章彦先生から着心地に関する部分の担当を依頼され、人間の解剖・生理・衛生を背景にした被服学、すなわち人を中心とした着心地の追究こそがご自身の進むべき研究方向との思いを強くされたそうです。
講演では、着心地研究について、人の生理反応、心理反応、行動反応を基本フレームとして、フレーム毎に膨大な研究事例を図表や写真を用いてわかりやすく説明くださいました。
被服を着る人体側から着心地を多面的に捉えることの意義を、また人を取り巻く環境の中に被服を位置づけ、建築・環境工学などとの関わりの中で捉えることの重要性を学んだとのことです。最後に若い研究者に外へ飛び出すことを恐れずに、異分野にも目を向け、学会活動にも積極的に参加し自分の世界を広げていってほしいと結ばれました。
2020.11.22 「私の研究紹介―衣服の快適性の追求―」
講 師
川端 博子氏(昭和56卒/昭和58院修/すおうの会会員)
川端氏は埼玉大学教育学部で教育・研究に携わっていらっしゃいます。2020年5月に、長年進めてこられた「衣服の快適性の追求」研究に対して、日本家政学会から学会賞を授与されました。コロナ禍の中、学会での記念講演が中止となりましたので、本会でご講演をお願いし、会員のみならず広く外部にも声をおかけしました。本会では初めてのオンライン講演会でしたが、会員外の方も含めて59名が参加し、質疑を通して会員の交流もはかることができました。
氏は衣服圧の手法から衣服の快適性追求の研究を始められ、衣服の動作快適性、拘束性、素材特性など様々な観点から研究を進められた結果、衣服の快適性とは衣服内気候、圧迫や拘束、肌触りを要因とする複合的な感覚で、総合的評価が必要であると結論づけられました。そして多くの研究の中から「ジャケットの裏地に関する動作快適性」と、「乳がん術後女性の衣生活」についての研究事例をお話下さいました。
2019.11.21~12.8 大嘗宮見学会
日 時
令和元年11月21日~12月8日の公開期間中各自の都合のよいときに見学
解説資
料配信
大嘗祭・大嘗宮とその際の服飾について
作 成
学習院女子大学名誉教授 増田 美子氏(昭和41卒/昭和43院修,すおうの会会員)
2019.10.1 スエーデン刺繍の手芸講習会協力
手芸講習会はすおうの会の企画としては初めての試みでしたが、学生5名とすおうの会会員5名の10名が参加して被服実習室で物つくりの楽しさを分かち合いました。題材は、スエーデン刺繍を用いたコースターつくりです。参加者の多くは、最初は戸惑っていても美しい色合いの模様ができあがってくると、達成感や満足感を味わっているように見えました。
2019.3.25 ミシンショールーム見学会
多摩センター近くにあるJUKIミシンのショールームを、参加者11名で訪問し、工業用ミシン部門、家庭用ミシン部門、電子機器基板に部品を搭載する産業用ロボット「チップマウンタ」部門の3カ所を、係員の丁寧な説明のもとじっくりと見学しました。様々な工程ごとに特化して開発されている工業用ミシン、メインミシンから世界中の工場のミシンに作業指示ができる状況、コンピュータを搭載して自動化の進んだ家庭用ミシン等々をまのあたりにしました。これらの最新の機器や情報に触れて大いに刺激を受けた見学会でした。
2018.1.18 講演会「洗濯表示とその改正の背景」
講 師
東京家政大学名誉教授 片山 倫子氏(昭和39卒/昭和41院修,すおうの会会員)
お茶の水女子大学生活科学部の「被服学概論」の授業の一環としての講演会が開かれました。
衣類等繊維製品の洗濯表示(取扱い表示)に関し、家庭用品品質表示法に基づく繊維製品品質表示規定が改正され、2016年12月から施行されました。この新JIS作成に予備実験から完成まで、深く関わって来られた片山倫子氏から、詳しい解説とともに改正の背景についてお話いただきました。新JISに準拠させるための課題は、洗濯機のタイプの違い(日本は渦巻き式や攪拌式が、欧米はドラム式が多い)、洗濯温度の違い(欧米は高温洗濯が多い)、乾燥方式の違い(日本は屋外自然乾燥が、欧米は乾燥機が多い)や、商標権などだったそうです。日本の生活スタイルに適応でき、かつ、欧州発の国際規準と整合させるために科学的なエビデンスに基づいて根拠を整備し、国際交渉を通じて改正が進められた様子が語られました。
また、家政学、及び家庭科が直面している課題に関する資料も示され、参加者に対し、生活分野の研究や実践の中核になってほしいというエールが送られました。
2017.10.14~15 「紅型」についての講演と型染めの制作実習及び有松絞り工場等見学会
1. 「紅型」についての講演と型染めによる作品制作実習
講 師
染色家 藤森弘子氏(昭和40卒,すおうの会会員)
【講演】
藤森氏の作品展示を拝見しながら、紅型に魅せられ30年にもわたり取り組んでこられた状況についての講演がありました。「紅型」は切り絵の技法や草木染めの技法を含めた技法で、布地に型紙を用いて糊(のり)を置き、顔料や染料で彩色し、絵画風の文様を表すもので、多彩な色挿しとぼかしの技法によって複雑な色調を表します。花鳥山水などの絵画風の文様が多く、沖縄で行われている型染めの一種だそうです。
【制作実習】
実際に型紙を置き、糊置きして用意していただいたテーブルセンター用布に色差しを行いました。ベンガラ(赤茶)、本藍棒(藍色)など約10種類の顔料を用いて染色し、立体感を強調するため、「隈取」と称する濃い色を入れました。完成は自宅で、1週間ほど天日干し、水で洗い糊を落とすと完成とのことでした。実際に糊を落として図案が浮き上がってきたときは感動でした。
2. 有松絞り工場等見学会
会 場
竹田嘉兵衛商店、蔵工房、久野染色工場、有松の古い町並み
愛知県名古屋市緑区の有松・鳴海地域を中心に生産される絞り染めは、江戸時代に尾張藩の庇護の下、独占を続け発展しました。木綿布を藍で染めたものが代表的ですが、現代は模様については他の生産地に類を見ない多数の技法を有しています。有松絞り発祥の地「有松」の古い町並みをあないびと(有松を案内するボランティア)と巡りながら、竹田嘉兵衛商店、茶室、蔵工房、久野染色工場、茶室などで有松絞りを十分堪能し充実した時を過ごしました。
2017.5.27 「ファッションとアート 麗しき東西交流展」見学とシンポジウムに参加
【見学】
19世紀後半から20世紀前半のファッションとアートに焦点を当て、横浜を拠点とする東西の文化交流の影響を紹介する展覧会に参加しました。
シンポジウム・・・京都服飾文化研究財団理事で名誉キュレーターの深井晃子氏(すおうの会会員)が基調講演、深井晃子氏は「ファッションとしてのジャポニズム」をテーマに、展示されている絵画作品をもとに、ジャポニズムとは19世紀後半、西欧に広がった日本趣味のことで、特にヨーロッパ各地で開かれた万国博覧会を通じて一種の日本ブームが到来し、日本の着物をまとった女性像、屏風や扇、花瓶、傘、浮世絵などをモチーフにが描かれた絵画が多くみられ、単なる異国趣味を超え、生活文化の広い範囲に及んでいると語られました。
【第二部 研究発表】
帝京大学教授、群馬県立近代美術館長の岡部昌幸氏による「ジャポニズムの広がりー19世紀末から20世紀の工芸・装飾美術・生活芸術」について、京都服飾文化研究財団キュレーターの周防珠実氏による「輸出された室内着」さらに横浜美術館主任学芸員の内山淳子氏による「日本画に描かれた洋風ファッション」についての発表がありました。
2017.1.14 クリーニング工場見学会
小林部長から1日取り扱う15000点の製品のうち半分がワイシャツであること、実験により水と石油などの溶剤を用いた洗浄の違いを解説していただきました。その後選別作業や大型洗濯機の並ぶ水洗い現場、ドライクリーニングでは蒸留装置による再液化、最先端パーク機などを見学しました。また、シミ抜きやプレス機によるワイシャツの仕上げなどリフォーム部門を見学しました。想像以上に丁寧な仕上げや手仕事に最後は人の力ということを感じました。
2016.2.20 「ファッション史の愉しみ-石山彰ブック・コレクションより-」展の見学会と講演会
【見学会】
お茶の水女子大学家政学部被服学科教授故石山彰先生が、約70年をかけて蒐集された膨大な数の服飾史に関する研究書、フアッションプレート、錦絵などのほか、神戸ファッション美術館所蔵の歴史衣装を合わせた約500点の資料展示を見学しました。
【講演会】
演 題
ファッションプレートの歴史と魅力― 石山彰ブック・コレクションを通して ―
講 師
東京家政大学服飾美術学科教授 能澤 慧子氏(昭和45卒,すおうの会会員)
演 題
展覧会「ファッション史の愉しみ」によせて ―娘の目からー
能澤慧子氏は、ファッションプレートの歴史と魅力をテーマにフアッションプレート特有の世俗性や反孤高性な表現の魅力について語られました。
村上万里氏は、遺品の本の整理と数年かかって企画展を実現させた経緯と依頼した石山研究室の能澤慧子氏ほかの方々へ感謝の言葉を語られました。
写真右:《王妃の宮殿の貴婦人》
ジャン・ミシェル・モロー 他 『18 世紀フランスの慣習と流行の歴史に資するための版画集』 パリ1774 年より
写真中:《レ・モード・パリジエンヌ》 1865 年より
2015.7.4 安曇野市天蚕センター等見学会
会 場
安曇野市天蚕センター・安曇野アートヒルズミュージアム
【安曇野市天蚕センター】
緑色の繭の天蚕の歴史や生態について展示資料やビデオを見ました。卵を貼った短冊を戸外のクヌギの枝に吊るし、その若葉で育てると言う伝統的な方法や大粒の繭であるが、繊維の長さは家蚕の半分で、家蚕より太く美しい光沢があり、高級品であることを知りました。工房の手織りの見学や、クヌギの枝についている緑色の幼虫をみて、このような伝統を守り続けてほしいと願いました。
【安曇野アートヒルズミュージアム】
ガラス工芸館併設の小さな美術館で、アールヌーヴォーの巨匠エミール・ガレの作品を観賞しました。動植物を閉じ込めたような作品、ジャポニズムの影響を受けた作品など、その繊細さは見る者を魅了しました。
2015.1.31 東錦絵 江戸自慢 三十六興講演会
日 時
平成27年1月31日 13:30~15:30
演 題
東錦絵 江戸自慢 三十六興 浮世絵に見る江戸の名所と年中行事
講 師
廣瀬 尚美氏(昭和33卒,すおうの会会員)
廣瀬氏から大分県日田市にある廣瀬資料館所蔵の広重や豊国が描く名所や人物の東錦絵を中心に、江戸の庶民の暮らしぶりを説明していただきました。美しい浮世絵に引きこまれ、江戸を散歩している気分に浸りました。
2013.10.2 「傘の表示と試験方法について」研修会
日 時
平成25年10月2日 13:30~16:40
会 場
一般財団法人ボーケン品質評価機構(江東区)
講 師
生活用品試験センター 見座宏昭氏
東京業務部 業務推進課 松村嘉久氏
この法人は永年の繊維・衣料品の品質評価で培われた知識・技術をもとに、現在はインテリア、台所用品等の生活用品、服飾雑貨、家具等の「性能・品質試験」「化学分析試験」「機能性試験」など幅広い品質評価をし、国民生活の安心と安全に寄与しています。今回は傘の基礎知識と製造方法、傘の表示試験方法や試験状況についての説明と、試験装置を見学しました。
2013.2.17 アクセサリーミュージアム見学とワークショップ
日 時
平成25年2月17日 13:30~16:40
会 場
アクセサリーミュージアム2F セミナールーム (目黒区)
テーマ
コスチュームジュエリーを観て、知って、作って、楽しみましょう !!
【講演】
美術館設立に当たっての思いと近代コステュームジュエリーの変遷(ヴィクトリアン~現代)をお話しくださいました。田中氏は戦後洋服の普及とともにアクセサリーの会社を経営して来られました。
【館内見学】
Room1~Room7 これまで収集した国内外のアクセサリーを展示するミュージアムを見学。
ヴィクトリア時代、アール・ヌーボー、アール・デコ、戦後のプレタポルテの様々な素材で作られたブローチやペンダントが多数展示されていました。
【ワークショップ】
「マイネックレスを創ろう!」用意いただいたビーズで楽しくネックレスを作りました。
2011.11.20 折形についての講演とワークショップ
会 場
お茶の水女子大学本館124室(生活科学部第1講義室)
講 師
国際服飾学会会長 東横学園短期大学名誉教授 有馬霞水(澄子)氏(昭和33卒,すおうの会会員)
国際服飾学会会長 東横学園短期大学名誉教授
折形とは、包みの作法として長い伝統を保ち続けてきたもので、昭和初期頃までは一般家庭でもごく日常的に使われてきた折りの文化です。講師の有馬氏は本会会員で、女重宝記に関する研究をはじめ服飾研究の分野で広くご活躍です。日本の伝統文化のお話と新年を迎える際の参考にしていただけるようなワークショップを指導していただきました。